大事なことだけ残ったような

魂の退社

会社を辞めて一カ月、という頃の章を読んでいて、清々しくさっぱりした感じが伝わってきました。
大事なことだけ残ったような…

P182
 改めて振り返ってみれば、大学生の頃は、何とかして憧れの会社に入りたくて作文の練習やら時事問題の勉強やらで本当に必死だったのです。そうしてようやく潜り込んだ会社を、まさかこうして途中で辞めることになるとは……。いやいや、このことをあの頃の私が知ったらどう思うでしょうか。本当に人生というものは何が起きるかわかりません。
 私を取り巻く環境は一変しました。「社宅」を追い出され、収入はなくなり、日々通う場所もなくなり、同僚もいなくなり、あれほどどっさり来ていた会社がらみのメールもぱったりと途絶え、まさに糸の切れたタコとはこのことです!(笑)。いや笑ってる場合じゃないか(笑)。ただただ貯金が減っていく一方です(笑)。
 ……あ、すみません。いやしかし、つい笑ってしまうのであります。
 いやー、なんでだろう?
 それは多分、私は自由だからなんだと思う。
 不安で、孤独で、しかしそのことに何とか耐えられる自分がいる。
 そのことを褒めてやりたいのです。
 そしてそれは、会社のおかげでもある。会社に翻弄され泣いて笑って戦ってきたからこそ、今の自分があるのは間違いありません。
 会社を辞めてみると、自分にできることと、できないことがあからさまに判明するということもよくわかりました。

P192
 ・・・これ以上何を望むことがありましょうか?
 え、仕事があればラッキー……?
 そうなんです。会社を辞めた今、いちばんやりたいことは何かと聞かれたら、それは「仕事」なのです。
 いや勘違いしないでくださいね。私は「就職」はもうしたくないし、お金を稼ぎたいわけでもない。
 でも「仕事」はしたい。今心からそう思います。
 仕事って何でしょうか。
 ・・・
 で、仕事って何なんでしょうと改めて考えたのです。
 仕事とは、突き詰めて言えば、会社に入ることでも、お金をもらうことでもないと思うのです。他人を喜ばせたり、助けたりすること。つまり人のために何かをすること。それは遊びとは違います。人に喜んでもらうためには絶対に真剣にならなきゃいけない。だから仕事は面白いんです。苦労もするし、思う通りにいかなくても逃げ出せない。しかしだからこそ達成感もあるし、仲間もできるし、人間関係も広がっていく。助けた人から今度は助けられる。・・・