常識をひっくり返す

魂の退社

お金は本質的な問題ではないというくだり、共感しました。

P97
 そして改めて考えてみれば、会社員ゆえにできたこともたくさんあったけれど、できなかったこと、我慢してきたこともたくさんあるのです。
 長い時間をかけて本格的な山登りにも出かけたい。外国をふらふら貧乏放浪するのも長年の夢でした。あるいは別の仕事だって色々チャレンジしてみたい。農業とか、料理人とか、大工だってしてみたいのです。
 そう考えてみるとどんどん夢が広がります。
 会社を辞めれば私、何をするのも何を名乗るのも自由です。ミュージシャンだって、アーティストだって、カメラマンにだってなれますよ!あくまで「自称」ですけどそれがどうしたと開き直ればいいだけのこと。縦笛やハーモニカを一生懸命練習しているミュージシャンがいたっていいじゃないですか。別にそれで食べていけなくたっていい。自分が納得していさえすれば、自分の肩書きは自分で決めればいいのです。誰に遠慮する必要があるでしょう。
 なーんてことを考えていたらもう止まらなくなってきたのです!
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 もちろん、ここでたちまち問題になるのが「どうやって食っていくんだ」ということです。
 そのことはさすがの無謀な私とて考えに考えました。しかしこれは、意外と何とかなるのではないかと思うに至ったのです。
 というのも、これからの大きな日本の社会問題は「人口減少」と「空き家の増加」です。これは経済成長を目指す立場から見れば共に足かせでしかありませんが、無職を志す身としてはこれほど強い味方はありません。
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 ・・・考えていくと、お金の問題は、実は本質的な問題ではないのではないかと思えてきたのです。肝心なのは、それまでの自分の常識をどのくらいひっくり返すことができるかではないか。そしてそれは決して惨めなことでも辛いことでもないんじゃないか……。