楽しい時間を長く感じるためには

アリエリー教授の人生相談室──行動経済学で解決する100の不合理

楽しい時間をもっと長く感じたい、という質問に対する答え、出だしがおかしかったです。

P131
親愛なるダンへ
 僕は年に一度、親友たちと一週間のスキー旅行に出かけることにしている。ここ一〇年ほど続いている恒例行事で、男だけで山にこもり、和気あいあいと雪を楽しむってわけ。僕らにとってこの時間はほんとに大切で、毎年待ちきれないほどだ。でも問題があって、スキー場に着くと時間が矢のように過ぎてしまう。一週間が驚くほど早く終わってしまい、あとでふり返るとさらに短く感じられるんだ。「楽しい時間は経つのが早い」のは知っているけど、一週間をもっと長く感じられる方法はないものかな? アヴィより

 君の書きっぷりからすると、答えは簡単だ。奥さんたちを連れて行けばいい(ごめん、いわずにいられなかった!)。
 もっとまじめにいうと、一週間を過ごしている最中にも、あとでふり返るときにも、旅行がそんなに短く感じられるのは、毎日がスキー三昧で代わり映えしないせいもあるんじゃないかな。だから、休暇中の一日一日を過ごしているというよりは、一つの長い経験をしているような気がするんだ。
 今度旅行に行くときは、毎日ちがうことをして過ごすのはどうだろう。スノーボードをするもよし、スキーをしない日をつくるもよし、スキーのレッスンを受けたり、ソリ滑りを楽しんだり、ただスキーの道具を変えてみるだけでもいい。たとえスキーほど楽しめなくても、いろんな活動を織り交ぜることで、休暇が一つの長いスキーの経験としてではなく、多様な経験の連続として記憶される。そうすれば盛りだくさんの経験ができるうえ、仲間とのめくるめく一週間にやったことをもっとよく味わえるはずだ。