ジェイ・シェーファーさんの家

この動画に出てくるジェイ・シェーファーさんとそのおうちが、スモールハウス・ムーヴメントのターニングポイントとなったそうです。

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 彼が最初に「スモールハウス」と名の付くものを建てたのは、1999年。当時は、アイオワ大学で美術の教鞭をとっていた。
 理由はといえば、「たくさんの物や空間に気を配るのは面倒だ」という他愛もない理由だった。つまり、家に入れるものは少なくていいし、無用な空間を管理することも御免だ、ということ。
 大きさは10平米弱。10平米というのは、なんと、駐車場の白線に囲まれた車一台分のスペース、あれよりさらに小さい。
 彼は当時の心境を振り返って、こんな風に語っている。

 僕は、自分の平穏な暮らしを支えてくれる家が欲しかったのであって、それを支えるために暮らしを捧げなければならないような家を欲しくはなかった。一方で、賃貸という考えは自分にはなかった。借り物じゃなくて、自分色に染めて使える、正真正銘の自分の家が欲しかったんだ。

 スモールハウスの存在意義を、過不足なくドンピシャリで表したコメントだ。

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 シェーファー本人も言っているとおり、彼のアイディア自体に決定的な新しさがあったわけではない。小さく住むことはもちろんのこと、トレーラーの上に住居を構える方法も、実際には多くの人がやっていたことだ。では、なぜ彼の家がそんなに有名になったのか?
 それは、ずばり、その「家らしさ」だ。
 従来のトレーラーハウスというのは、小さいだけでなく、伝統的な「家屋」とは別の種類の、なんというか、箱というか、機械というか、とにかく、それを手に入れることは「家を構える」という感覚には程遠かった。
 一方、シャーファーの家の、三角の屋根と木の質感には、見る者を安心させてくれる力がある。・・・彼は、「シンプルに安く仕上げたかったら、どうして立方体の箱型にしなかったんだ」と問われ、こう答えている。

 生活をシンプルにしようとするとき、最も難しいのは、何が自分の幸せに結びつくか見極めて、それ以外の余分なものから逃れることだ。僕は勾配のある屋根と、陰を落とす庇が好きなんだ。それは幸せに結びつくものであって、余分なものじゃない。