仲間の笑顔がモチベーション

ゆるキャラのすすめ。

こんな生き方がしたいな〜と思いながら読んだところです。

P130
 僕がノーヒットノーラン名球会入りといった、個人的な名誉にあまり興味が持てないことは、これまでにさんざん書いてきた。
 では、石井一久という投手は、一体何をモチベーションに22年間も選手生活を続けてこられたのか。
 それは、チームメイトや家族、ファンの人たちといった周囲の人たちの笑顔だ。とくに同じ釜の飯を食ってきたチームメイトと一緒に、笑顔で喜びを分かち合えることに勝るモチベーションの源はないと思っている。キレイ事のように聞こえるかもしれないが、本当だ。
 ここで勝利すれば優勝が決まる、という重要な試合。相手バッターをあと1人打ち取れば、勝利でゲームセット……そんな場面になると、ベンチもがぜん落ち着かなくなってくる。みんな席から立ってベンチ前の手すりのところに前のめり気味に並び、飛び出す瞬間をいまかいまかと待ちわびる。そんな光景を、テレビの野球中継などで見た記憶のある人も多いだろう。優勝が決まった瞬間、グラウンド上の選手たちは喜びを爆発させて、一斉にピッチャーのところに駆け寄ってくる。ベンチの選手たちも、それに負けじと飛び出して、マウンド付近の歓喜の渦に飛び込んでいく。言葉にはできないくらい、最高の瞬間だ。
 そんなとき、僕はちょっとフライング気味に身を乗りだして準備をし、勝利の瞬間にはベンチから誰よりも先に飛び出していくほうだった。日ごろはあまり感情を表に出さない僕も、このときは手を振り上げ、全力でダッシュし、全身で喜びを表現する。というか、無意識のうちにそうなってしまう。だって、いつもの自分を忘れてしまうくらいの喜びなのだから仕方ない。僕も笑顔、チームメイトもみんな笑顔。そんな夢のような時間は、なかなか経験できないもの。だからこそ、非常に貴いのだ。
 僕が野球を続けられたのは、そんな貴重なひとときをみんなとまた味わいたい、という思いに突き動かされてきたからなのかもしれない。そして、そうした思いは周囲の人にも確実に伝播していくと、僕は信じている。
 仲間を笑顔にしたい、といった純粋な思いは、いつか必ず自分にも返ってくる。