このことは、仕事柄いつも心に留めていることですが、改めて大事だなと思いました。
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「なんでも仙人、変わりたくてもなかなか変われない人や、自分を否定している人に向き合う時は、どうやって向きあったらいいですか?」
「そちはその人に対して、『なんとかしてあげたい』とか、『その人を変えてあげたい』とか思ってないかね?」
「思ってるかも」
「『なんとかしてあげたい』とか『その人を変えてあげたい』という思いは、『今のその人ではだめなんだ』と言っているのと同じなんじゃよ」
「え、そうなんですか?!」
「そうじゃよ。そしてその思いは、言葉に出さなくても相手に伝わってしまうものじゃ」
ドキッ。なんでも仙人は静かにわたしを見て、こう言った。
「変わりたくてもなかなか変われない人や、自分を否定している人に向き合う時はな、『今はこういう状態なんだね』『今はこう思うんだね』と、変わりたくても変われない状態を、ありのまま認めてあげるんじゃよ。それだけでいい」
わたしは目を見張った。なんでも仙人はやさしい声で続けた。
「今、目の前にいる人は、自信をなくし、自分の中の光が見えなくなっているかもしれない。しかしな、その人の中にもまぶしい光はちゃんと存在しているんじゃよ。その光をちゃんと分かった上で、『今はこう思うんだね』と相手の状態をありのまま受け止めてあげるのじゃよ。
そちは自分の力でその人を元気にしてあげたいかもしれない。目の前で人が元気になってくれると、嬉しいものじゃ。しかしな、人が腑に落ちる瞬間はいろいろでなぁ……、その人のタイミングというものがある」
確かにそうかもしれない……。
「自分の力でその人を元気にしてあげたいと思うと、力が入りすぎるから、時間がかかる人には祈ってあげるんじゃよ」
「どうやって祈ればいいですか?」
「『どうかこの人のタイミングで、心が軽くなられますように……』と」
「!」
なんてやさしい祈りなんだろう……。わたしはなんでも仙人の言葉をかみしめた。