右脳と左脳

フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する

この辺りもとても興味深かったです。

P55
 通常、左右の脳半球は、思考を行き来させて互いに補完し合っている。左脳は、どちらかというと分析的で論理的な思考をおこなう。言語能力のありかはここだ。一方、右脳はどちらかというと包括的にとらえ、芸術的な思考をおこなう。しかし、全体を支配するのは左脳で、これが最終的な判断を下す。命令は、左脳から脳梁を経て右脳に届く。ところがそのつながりを断つと、右脳は左脳の絶対的な支配から自由になる。もしかしたら右脳に、支配者たる左脳の意志に反するそれ自体の意志が存在することもあるかもしれない。
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 各脳半球と個別に、もう片方の半球に気づかれることなく意思疎通を図る方法はいろいろある。たとえば被験者に、質問を片方の眼だけに見せる特別な眼鏡をかけさせれば、片方の半球だけに質問をすることは易しい。問題は、それぞれの半球から答えを得ることだ。右脳は話せない(発話中枢は左脳にしかない)から、右脳から答えを得るのは難しい。ガザニガ(分離脳の権威)は私に、・・・右脳がスクラブル(アルファベットのコマを組み合わせて単語を作るゲーム)の文字を使って「話せる」ような実験を考案したと語った。
 ガザニガはまず、被験者の左脳に、大学を卒業して何になりたいかと問いかけた。すると被験者は、製図工になりたいと答えた。ところが、(物言わぬ)右脳に同じ質問をすると、興味深いことになった。右脳は「自動車レーサー」という文字を並べたのだ。支配者たる左脳の知らないところで、右脳はひそかに将来についてまったく違う意図を持っていた。
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 政治家や結婚相手や将来の職業にかんするわれわれの選択はどれも、自分が意識していないことがらの影響を受けているのだ(たとえば、奇妙なことに、「DeniseやDennisという名の人は不釣り合いなほどdentist[歯科医]になりやすく、LauraやLawrenceという名の人は比較的lawyer[弁護士]になりやすく、GeorgeやGeorginaといった名前の人はgeologist[地質学者]になりやすい」とイーグルマン(神経学者)は言っている)。