羽生善治さん

捨てる力 (PHP文庫)

羽生善治さんの切り抜きもありました。
ブログがあると、切り抜きは捨ててしまっても、いつでも読み返せるので助かります(^^)

まったくミスのない対局もほとんどありませんし、常にミスや負けとつき合っている。そういう中でも、気持ちを切り替え、取り返しのつかない状況にならないようにするとか、全体の流れや方向性を見失わないようにするのが大事なんです。それに、勝っている時は方向転換するのが難しいですが、負けている時なら、自分を変化させやすい。極端に変化の早い現代では、むしろ適当な負けも必要なんです。

経験を積んで年齢を重ねると、記憶力や読む力が衰えても、直感や勝負の全体を見通すような大局観が研ぎ澄まされ、答えのない問題に対処する能力が上がってくる。・・・私が一番いいと思っているのは、それこそ80歳ぐらいになって、もう何があっても動じず、迷わない、よけいなことを何も考えない状態。知識や経験は足されていくけども、結果としてはどんどん引き算されて、あまり考えず、煩わされない。それが、一つの理想です。

統計や確率は万能じゃない。だからこそ、本来人間がもつ野性の勘のようなものを磨くことを意識的にやった方がいいと思っているんです。
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それは、不慣れな環境にあえて行くことです。私は土地勘のない場所で取材を受けるのが好きだったり、旅行にもよく出かけるのですが、勝手のわからないところに身を置くと、今まで眠っていた力が自然に出てくる。実戦の対局でも、経験値の少ない局面であれば、そこでいろいろなものを手探りで見つけ出そうとして一所懸命にもがき、そのもがきが次につながる。
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何でもいいから、いつもとは違う小さなリスクや小さな変化を取り続ける。それが数年経った時には、以前の自分とは全然違う姿になっている。